マフィーからの手紙(4)

みなさん今日は。菰野町の里にも美しい花々がいっぱい咲き乱れる季節となりましたね。
毎日を、楽しく、仲良くお過ごしですか? 

いま、マフィーの森では、それはそれはきれいな草花たちが、そよ風にゆれて微笑んでいます
。暖かい季節は、人間にとっても、私たち妖精にとっても、生きている喜びを実感するうれしいものですね。

さて、今回は冬の終わりに起きた、ある出来事についてお話します。

マフィーの森には冬の終わりになると頭を悩ませる妖精もいるのです。
それは、雪だるまの妖精スノーマンです。彼にとって一番忙しい季節は冬です。
中でも、冬が終わるころ、森の子供達に「なぜ、春がやって来るのか?」ということを教える役割があるからです。

さて、今年の冬もマフィーの森では、「小さな夢の雪だるまコンテスト」が開催されました。
主催者はもちろんスノーマンです。芸術の森にふさわしく参加総数は108組でした。

どれも工夫が凝らされた夢一杯の雪だるまたちが勢ぞろいしました。
芋虫のポテト君が仲間と一生懸命に作ったまん丸の雪だるまは、柊の葉っぱの上で風に揺られています。

ノロマ君がラビットさんと協力して作ったものは、大きなドングリの形をした雪だるまです。
もちろんイノシシのボアも子供たちと一緒に切り株の雪だるまに挑戦しました。

マフィー森ではコンテストに順位をつけません。
参加者全員にいろんな賞が贈られるのです。

例えばこんな具合です。「かわいいで賞」「がんばったで賞」「平和で賞」「仲良しで賞」という具合です。

熊のベアさん一家は、昨年産まれた小熊のベベ君のために、ひと月もかけて森で一番大きな雪だるまを作りました。
ベアさんは「リトルドリーム」と命名しました。
ベベ君は、初めて見る雪だるまに大喜びです。毎日毎日、リトルドリームと遊びました。

頭の上まで登って一気に滑り降りたり、体当たりして相撲の稽古をしたり、
腕にぶら下がってブランコをしたりと、リトルドリームと大の仲良しです。

妖精のスノーマンは、ベベのうれしそうな顔を見て満足しているのですが、こころの中は少し複雑です。
なぜなら、春が来て暖かくなると、リトルドリームが溶けてしまうことを小熊のベベがまだ知らないからです。

その日が来たら、ベベに何と説明したらよいのだろうかと。
毎年繰り返される、森の子供たちへの説明に頭を悩ませています。

ついに春の足音がだんだん大きくなってきました。
ポテト君の作った雪だるまが最初に溶けてしまいました。

ノロマ君やラビットさん、ボアさんの雪だるまもどんどん溶けていきます。
一番大きなリトルドリームは、他の雪だるまがすべて溶けてしまっても、まだ頑丈なままです。

ベベにはリトルドリームしか目に入りません。

モンシロチョウのパピさんが
「ベベちゃん!春がきたから、もうリトルドリームに体当たりしてはかわいそうだよ」と耳打ちしますが、
ベベにはその意味がわかりません。

それから数日後の初夏のような暖かい日のことです。
ベベがいつものように「リトルドリーム君、こんにちは。今日も仲良くしようね」といって顔を見上げると、
リトルドリームの顔が少し溶けて悲しそうに見えました。

ベベはリトルドリームに、「どうして泣いているの?」と聞きました。返事がありません。
ベベは元気づけようと、リトルドリームに体当たりしました。

すると、あんなに頑丈だったリトルドリームが、グラグラッとみるみるうちに倒れてしまったのです。
決して壊れることなどないと信じ込んでいたベベには、何事が起きたのか理解ができません。

ベベはしばらく茫然としてしまいました。そして自然と涙があふれてきました。
ベベはあわててリトルドリームを起こそうとしますが、
ベベが触れば触るほど、リトルドリームの姿がなくなっていきます。

遠くからそれを見守っていた妖精のスノーマンが、途方にくれているベベを見かねてやさしい声で話し掛けます。

さて、スノーマンがベベに一体どんなお話しをしたのかは、
みなさんがスノーマンになったつもりで、考えてみてください。

リトルドリームは雪解けの水となって小川に流れ、森の鳥たちが水浴びをして楽しそうに歌っています。

ベベは小川のほとりで、リトルドリームがどこに行ってしまったのかと考えながら、
雪だるまに会いたくて「ふ〜ゆよ来い、は〜やく来い」と歌っています。

ところで、みなさんはベアさん一家の作ったリトルドリームに、どんな名前の賞をあげたらよいと思われますか?

 私たちも、スノーマンが森の子供たちにいつも教える、いのちの不思議さや生きてることの大切さ、
また大地のやさしいこころなどを、考えたいものですね。

みなさんの菰野町でも、今度の冬に「小さな夢の雪だるまコンテスト」が開かれるとうれしいですね。

それでは、また小さな夢の国でお会いしま賞。